今回は外来でよく見かける脂肪肝についてです。
以前は飲酒によるアルコール性脂肪肝が多かったですが、最近はお酒と関係ない脂肪肝が増えています。アルコールの飲み過ぎによる脂肪肝のメカニズムは若干複雑ですので、別な機会に。
非アルコール性脂肪肝の原因は比較的単純で栄養過多と運動不足となります。現代人に増えている疾患であり、肥満とリンクしています。
脂肪肝が進行すると炎症や繊維化が起こり脂肪肝炎となり長い間かけて肝硬変となります。そして肝がんのリスクも高まります。
一般的に脂肪肝は直接治療する薬剤はなく食事と運動でコントロールすることとなっています。
最近、病名の変更がありました。まずはそのことについて少しだけ。
以前は飲酒と関連しない脂肪肝を非アルコール性脂肪肝(NAFLD)、その病態が進行したら非アルコール性脂肪肝炎(NASH)といっていました。これらはアルコールを主原因としないだけで栄養過多といったエネルギー代謝の問題があります。そうしますと飲酒される方でも非アルコール性脂肪肝を発症しますので病名として不都合があります。
そこでmetabolic dysfunction-associatedを頭に付けMASLD, MASHと呼ばれるようになりました。我々はマッスルド、マッシュと言っています。
ただし日本語の病名が厄介なことになっています。
MASLDは代謝機能障害関連脂肪性肝疾患、MASHは代謝機能障害関連脂肪肝炎です。
学会の偉い先生たちが決めたのでしょうけど、こんな病名、患者さんにどのように伝えたらいいのでしょう。結局、単に脂肪肝や脂肪肝炎で良さそうです。
食事でとった脂肪がどのように代謝されるか押さえておきましょう。
食事中の脂肪は小腸で吸収されカイロミクロンという中性脂肪とタンパク質からなる粒子となりリポタンパクリパーゼという酵素で分解され肝臓に運ばれます。
肝臓でコレステロールが生成されVLDLとして血中に放出します。VLDLはリポタンパクリパーゼで分解されLDLになります。これがLDLコレステロールです。
体にあるコレステロールのほとんどは肝臓で合成されています。肝臓において中性脂肪を原料としてコレステロールが合成されるという理解でよろしいかと。
中性脂肪の代謝に重要な役割を果たすタンパクがあります、PPARαです。中性脂肪を減少させるにはPPARαを活性化すればよく、PPARαを活性化する薬が中性脂肪の高い患者には処方されます。
PPARαは肝臓にも存在し、中性脂肪の代謝に重要な役割を持ちますから、この薬が脂肪肝に効果あるとは思いますが、長期にわたる投与が必要となり、効果はまだはっきりしません。実際に脂肪肝炎の治療薬として治験は進行中です。
今回はここまでとし、その2に続きます。